幸福の長方形

 

一匹のメス猫が庭にある日やってきて、そのうち頻繁にやってくるようになり、

いつしか、ぼくたちは名前で呼びはじめ、彼女はうちの子になった。

ミーちゃんは気がついたら身重となっていて、どこかで産んだ。

ミーちゃんは黒と白黒とキジトラの子を連れてやってくるようになり、

彼女は縁側で待機し、子猫をうちの中で遊ばせるようになった。

ミーちゃんがなんらかの合図をすると

子猫たちは「はーい」とばかりに、いそいそとわが家をあとにし、どこかへと帰っていく。

そういうルーティンができた。

子猫がずいぶんとぼくたちに馴染んだある日、ミーちゃんなしで遊びに来た。

その日以来、ミーちゃんを見ることはなくなった。

 

人間カップルはそれを、「ミーちゃんに託された」と解釈し、彼らの世話を引き受けることを決めた。

黒猫はクロ、白黒はシーくん、キジトラはピースでピーちゃんと命名してからどれくらい経っただろうかある時、

ピーちゃんがみごもっていることに気づく。

そしてピーちゃんは、うちの押入れで子を産んだ。

結局ピーちゃんは全部で3度出産し、消えた。

 

ダンボールの彼らはその3回目の五つ子の三匹。

五つ子は、ほとんど外の世界を知らない。

そのことを、どこか申し訳ないことをしているような感覚がずっとある。

だけど、だから、この家に生まれた彼らの人生を、とにかく幸福なものにしてあげたいとずっと思っている。

 

そう広くはないわが家、彼らの世界は、この地球の中の本当の本当に小さいスペース。

さらにその中のこの数十センチ四方に進んでおさまる姿を見ると、

狭くても、ここが彼らにとってもマイホームなのだな、と嬉しくて、ちょっと安堵する。


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