2冊目

 

うちは、いわゆる平凡な家だったなってよく思う。

実は普通も平凡もないとは思うけど、でも言葉は存在するから、

そのように考えたり、事象をその言葉にあてはめてしまう回路はある。

 

父は会社員で母は専業主婦で、三人兄弟で、

家は大きくも小さくもない二階建てで、

お金持ちでも貧しくもないような暮らしで、

大自然でも都会でもなく、コンビニまでは歩いて10分はかからないくらいのまあまあの田舎に育った。

そこに特殊なものはないように思ってしまう。

ただ、あとから考えて、唯一変わっていたかもなと思うのは、

母がぼくたち兄弟を絵本やら児童書やらの読み聞かせで寝かしつけていたことだ、しかも毎晩。

 

兄とぼくは並んで布団をしき、布団の中で目をつぶったりしながら、

母の朗読を聞いて、もっと読んでとか時にせがんで、そうして眠りについていた期間が、

何年間だったのかはよくわからない。

 

その後、テレビやら音楽やら映画やらいろんな娯楽をおぼえていくが、

気がついたら手にしていた的原初のエンタメはまちがいなく絵本の世界。絵本的世界。

 

今でも絵本の内容というよりは、

たとえば聞きながらひたっていた想像世界の空気みたいなものをふいに思い出すことがある。

というか、なにが絵本のことで、なにが実際のことだったかはもはや区別ができない。

まざりあって、ひとつの記憶みたいになってしまっている。

 

大人になるにつれ絵本のことなどどうでもよくなっていったけれど、

20代の後半になり、自分の中には今でもあの頃の自分がいる、あの頃みたいな感性が存在していると気がつき、

いくつかの絵本を買いなおした(正確には初めて買った)。

 

本を7冊紹介するにあたり、

良くも悪くも自分の感性の骨格みたいなものとなってしまっている絵本世界は外せないと思った。

そうして選んだのが『おおきな きが ほしい』。

 

この本にでてくる、主人公の男の子の理想の家? 部屋? アトリエ? は、

そのままぼくの理想になっている。

子どもの頃からその憧れははじまり、母に「この木を植えてほしい」とたしかお願いをした。

庭にあった白樺の木が、いつか大きくなってそこにこうした小屋をつくる想像をよくした。

 

いま、わが家は大きな木の下にある。

引き寄せてしまったみたい。


コメント
コメントする








   

CALENDAR
S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    
<< June 2020 >>
CATEGORIES
ARCHIVES
SELECTED ENTRIES
RECENT COMMENT
PROFILE
SEARCH THIS SITE.
MOBILE
qrcode