外の世界/内の世界

野暮用で、一時間駅前へ。みなマスク。すいている湿った屋外でもマスク。マスクはそれは楽だろう。楽なのです。でも、通達に疑いをもたず、はい、そうですか、と当たり障りのないその仮面で生きていて大丈夫だろうか? 乗せられたベルトコンベアーは本当に安全安心な未来へと続くのか? 約束は守らずともそれを忘れてしまう人たちには、また新しい約束をすればいいのだと厚顔なリーダーをどうしたら信じられる? マスクの世界に、ふつふつと怒り。不甲斐ない自分への怒り。

 


憧れと自虐

 

夜は8時に寝て朝は4時に起きて執筆? お昼を作ったら午後は絵を3枚描いて、涼しくなった夕方に畑仕事? いいね、いいね、いいね! なになに、顔はハンサムで子どもは可愛くて、来月には面白そうな本を出版? いいね、いいね、いいね! 止まらない心の「いいね」ボタンは、自分への残念ボタンだったよう。寝てばかり、やる気が起きない、未来は不透明。残念、残念、残念……。憧れがつのるほど気持ちは沈んでゆく。横になった。胸に手を当てた。「でも、それでいいよ」。傷ついた自分の手当てをした。


一体感

 

彼女はがんだという。権威にそう言われたのだという。それは闘病の狼煙。悲痛な彼女の投稿を見た夜は、

悲しくて怖くて苛立って嘆き、憎らしく恨めしく自己嫌悪。まるでクラウドのようにぼくの内部にもそれ

は共有され、夢の中まで追ってきた。戦いはやめ、”悪性”の自分も抱擁できたらどんなにいいだろう。彼

女のネガティブはぼくにいつくしみを発生させた。だけど、どうしたらエールを送ることができるのか。

「大丈夫、大丈夫、大丈夫」。わたしたちのクラウドにそう送信した。


回路

 

きっかけはいつも唐突だった。

ふとした誰かの言葉や道でつまずくようなちょっとした行き違い。

クリックする場所を間違えて運命的な出会いが待っていたこともある。

それなのに何故、信じないのだろう。

どうして自分がぜんぶを支配し、すべてを理解していないと気が済まないのだろう。

 

きっかけは時に闇の入り口だった。

激しい後悔は夢の中まで追いかけてくるほど僕を苦しめた。

しかし、ドン底に達すると第三の道が見えるのだった。

否定でも肯定でもない中庸の道。

それが自分の世界を根本から刷新してくれた。

 

今、立ち止まっている。

あたりはしんと静まり、無風。

心だけがざわざわと波立っている。

選ばなくては、決めなくては、進まなくては。

 

選ばないことも決めないことも進まないことも本当はできない。

動く歩道のように、ベルトコンベヤーのように、どうしたって明日へ運ばれてしまう。

 

焦って急いでどこへ行くつもり?

あなたは何になりたがっているの?

どうしてそんなに自分が許せないのかしら。自分の何が不満?

 

僕は夢を見ているのかもしれない。生まれてから今日までずっと。

あるいは催眠にかけられているのかもしれない。

 

自分をこんなにもすり減らし、身を粉にして、誰を幸せにできるというのか。

シリアスな自分をあまりにも馬鹿らしく思えた。

笑ってみた。

ひとりで笑う自分がおかしくて笑えてきた。

全身に血が通いだし、その輪が肉体をはみでて広がり、光のシールドができた。

 

自分と佇みなさい。

 

追伸のように告げて女は、青い光となって消えた。


愛の呼吸

川はやがて大きな海へと流れ着く。

 

わたしは海。

わたしは一雫。

 

人生も川のように一瞬もとどまることなく流れ続けている。

昆虫が光に向かうようにわたしも、

わたしたちも、ただ光へと向かい生きているだけかもしれない。

 

気がついたらずいぶん年をとっていた。

振り返ると後悔も懺悔も怒りも悲しみもたくさんあったけれど、

どのような瞬間もまた光だった。

どれも欠くことのできない貴重な体験だったとわかる。

 

大いなるものにいつも抱かれ、わたしは存在している。

愛の中に生きている。

 

それが平凡で波乱万丈なこの人生がわたしに示してくれた答え。

そして、いつかくる終わりの時にきっと、新たな目で人生とは何であったかを見るのだろう。

 

目をつぶり、閉じた目の中で目を開き、ゆっくりと深呼吸。

そこに無限が在った。

 

無制限の愛の中、わたしたちは呼吸をしている。


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